金融機関が勧めないのは良い商品の証
確定拠出年金には会社が実施して社員が入る「企業型」と、個人が自由に入る「個人型」の2種類があります。企業型は会社が制度として導入していれば、関心の有無にかかわらず加入する機会は得られます。一方で個人型確定拠出年金は利用できる人はたくさんいるのに利用率は1%にもならないという非常に惜しい制度です。
普及率が低い理由は金融機関にとってはあまり儲からない制度だから。と言われればなっとくなのですが、そのせいで積極的に販促されていません。NISAとは対照的です。金融機関が得しない(=手数料がとれない)ということは、裏を返せば個人にとってはメリットが大きいということでもあります。
個人型確定拠出年金は2種類の加入パターンがあります。
①自営業者など国民年金保険料の納付者
月額6.8万円まで毎月積み立てることができます(国民年金基金に入っている場合は合計6.8万円まで)。
現在は5万人程度ですが、対象者は約1,800万人にのぼります。
②会社員(勤務先が確定拠出年金や企業年金を実施していない)
月額で2.3万円まで毎月積みたてることができます。
企業型の加入者は約11万人ですが、本来対象となるのは約1,600万人。こちらは本人の意思というよりも、企業(事業主)が制度を導入しているか否かということになるため、現在は大企業など一部しか導入が進んでいません。
免税効果はNISA以上
企業型、個人型、どちらも利用率は1%にも達していませんが、確定拠出年金は、「運用益非課税」というメリットはNISAと同等でありながら、「何度も売り買いしてもずっと運用益非課税」となっており、NISA以上の税制優遇です。
また、所得税や住民税が軽減されるというのはNISAにはない利点ですし、受け取り時点も退職金みなしの非課税枠が利用できます。
金融機関選びのポイント
個人型確定拠出年金は、国の制度でありながら金融機関ごとに手数料や金融商品のラインナップが異なっています。そのため、どこの金融機関で個人型確定拠出年金を利用するかで運用の結果にも影響してくることになります。
運用結果は思い通りにいくものではありません。ただし、金融機関に支払うコストは自分で比較判断し選ぶことができます。
具体的には、「事務手数料」と「運用商品リスト」で比較検討をしてみてください。
事務手数料
事務手数料については資産額の内枠で引かれていきます。国民年金基金連合会、運営管理機関、信託銀行がそれぞれ徴収し、割高のところでは年6,000円にもなります。税制優遇があるとはいえ、できれば手数料が低いところを選ぶのがいいでしょう。
運用商品ラインナップ
長期で資産形成を行うことを考えれば、信託報酬等の運用手数料の差は大きく、手数料が低い商品が含まれているかを確認したいところです。たとえば、日本株で投資するインデックスファンド(TOPIXや日経225連動)で、信託報酬が0.2%の商品(販売時手数料、解約時の信託財産留保額も無料)などは、銀行の窓販では購入できない割安設定です。企業型だと、さらに割安に設定されているものもあります。ただ、運用商品提供機関(銀行や証券会社)が、自社が取り扱ってほしいアクティブファンドをラインナップに混ぜていますので、予想リターンは高そうでも注意が必要です。
繰り返しになりますが、投資の運用結果はコントロールできませんが、コストはコントロール可能です。
個人型の積み立ては5,000円から
個人型の確定拠出年金については5,000円以上1,000円単位で積立額を決定します。積み立ての方法は、自分の銀行口座を指定し引き落としてもらうか、会社が給与支払い時点で直接振り込みするかのどちらかです。
毎月積み立てを行う場合、最終的には税金が軽減された効果が生じます。仮に所得税率が10%であったとしても、毎月5,000円、年60,000円積み立てれば、税控除でのメリットが6,000円ということになりますので、事務手数料分を差し引いても元がとれます。
リスクを取らなくても税控除を得られるとても有用な制度
制度に加入すると、まず「配分指定」といって、どの投資対象に何%資金配分するか決めます。投資については勉強が必要な部分でもありますが、投資にあまりかかわってこなかった人はむしろいい機会ですのでぜひ楽しみながら勉強してみてください。また、リスクについて理解できていない段階ならば定期預金などの元本確保型の商品に資金配分するのでも良いと思います。
定期預金なら元本割れする可能性はなく、金融機関が破たんしない限りは確実に利回りがつきます。期待できる利回りは積極的に運用するのに比べて低くなりますが、なにもしなくても税効果で所得税分はそもそも得しているのです。