コンタンゴのリスクと損切りの徹底【2020年原油ETFの例】

会社員のマネーハック的には、ETFは有効な投資対象の一つと考えています。しかし、ETFの中には長期の資産形成に不向きのものもあるという例をご紹介します。

ETFの種類によって内包しているリスク

ETF(上場投資信託)は漢字の名称のとおり、株式市場に上場している投資信託で、いろんな種類があります。しかし特性、リスクを知っていないと、思ってもいない形で損失を大きな痛手を被る可能性があるものもあります。

コンタンゴとは

ETF投資のリスクの一つがこのコンタンゴです。

コンタンゴとは、先物型ETFと呼ばれるタイプのETFで注意する必要があるリスクです。

先物の価格において、期日が遠い先物(期先物・きさきもの)の価格の方が、期日が近い先物(期近物・きぢかもの)の価格よりも高い状態のことをコンタンゴと言います。

先物は決済の期日が定められていますが、この決済までの期日が長いほど、将来の価格の不確実性が増すため、時間的価値(証券外務員の試験でも出てきますね)分が上乗せされ価格は高くなります。

先物は期日があることにより、期日によって違う商品という取り扱いがされます。そのため、先物型ETFを長期間保有(買い持ち・ロング)する場合には、期日までに期近物を売って、期先物を買うロールオーバーという売買を繰り返すことになります。

安く売って高く買い直すという、単純計算でマイナスになる取引を繰り返す形ですので、その期間が長くなればなるほど、先物型ETFの価格は目減りしていくことになります。

2020年の原油ETFでの例

先物型ETFには上記のリスクがあるため、長期保有には向きません。

そのことは、日本取引所のサイトでも説明されています。

とりわけ商品先物取引や日経VI先物等のボラティリティ指数先物取引等は、コンタンゴになることが多くなる傾向があり、こうした先物価格を参照する先物型ETFは、ロールオーバーを繰り返すことで減価していく場合があります。そのため、とりわけ中長期の投資を行う場合には留意が必要といえます。

ETF投資のリスク(日本取引所)

日本取引所のこちらのページをみてもらうと、具体的に該当するETFも示されています。

出口(手仕舞うタイミング)をイメージして投資するのが大事

具体例としてみるのは、[1699]NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信

まずは当時のチャートを見てみましょう。

コンタンゴ、原油ETF、価格乖離の理由

2020年春頃の原油相場

2020年の年明けから4月にかけては、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国の協調減産交渉が破綻したことを背景に、WTI原油先物価格は急落。4月下旬には1983年のWTI先物の上場以来、初めてのマイナスの価格を付けるなど、これまでにない値動きとなりました。

原油先物価格と原油ETFの値動き

原油価格の下落をみて、

「いまは低迷している原油価格だけれど、いずれは持ち直すだろう」

という相場観のもと、チャートの赤文字になっている4月第1週頃に[1699]NOMURA原油ETFを買ったとします。この時のETF 価格が162円で、WTI原油先物価格は1バレル26.08ドル。

その後、4月末にかけてWTI原油先物価格の下落に歩調を合わせる形でETFの価格も下落。(チャート上4/27の矢印の時期)

ただ、それ以降のWTI原油先物価格は持ち直し、5月半ばには1バレル30ドル台を回復しています。

しかし、購入時の水準までWTI原油先物価格が戻っても、ETF価格は購入時を下回っている状態。さらに年が明けて2021年2月8日(赤い矢印の箇所)時点をみても、WTI原油先物価格が購入時の倍の水準以上になっているにも関わらず、ETF価格は購入時を下回っていることが分かります。

ETFの価格形成要因はコンタンゴだけではないものの

原油ETFとは言っても、必ずしも主要な原油先物価格に連動してはいません。

例えば、日本株ETFであれば、日本企業の複数銘柄を保有するETFであることがイメージできると思いますが、どの銘柄を多く保有しているか、その比率次第でETFの価格が変わるため、日経平均やTOPIXなどと必ずしも連動する訳ではないというのは分かるかと思います。

原油ETFも同様で、前述した通り先物には限月があるため、どの限月を保有するか、その比率次第でETF価格が変わってきます。2020年の原油ETFはそういった組み入れ比率の要因も大きく影響したようですが、ここではあくまでも長期投資に不向きなETFがあるということを覚えてもらえればと思います。

エントリーよりも手仕舞いが難しい

このように、ETFの価格は複数の要因によって決まりますが、コンタンゴになる傾向が多い先物型ETFの場合は長期保有には向いていない、ということを覚えておく必要があります。

また、多くの人が、一度ポジションを保有すると、保有効果、現状維持バイアスにより「なかなか手放せない」心理状態になります。

投資に限ったことではありませんが、投資にも同じことが言えます。

先物型ETFだけの話ではありませんが、エントリーする際には保有期間や値動きなどがどういう条件になったら手仕舞う(決済する)というのを予め決めておき、徹底するのが肝心です。

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