- 知人に自分の専門分野(金融商品)を質問されたら
- 相手は顧客ではない
- まずは制度について説明する
- 公的年金制度の仕組み
知人に自分の専門分野(金融商品)を質問されたら
数日前に知人と会った際、会社がDCを導入することになったということで、確定拠出年金について教えて欲しいと言われた。
金融機関に務めているとこういうシチュエーションは決して珍しくない。
住宅ローンや株式市況など、それぞれの専門分野によって内容は異なるにせよ、金融機関に勤めている人なら何度も経験したことがあるはずだ。
相手は顧客ではない
私がいつも気を付けているのは、知人という立場の人間は決して「顧客」ではないという点。彼等からすればコスト、私からすれば報酬を得て知識や情報あるいは自分の相場観を提供する訳ではないということ。
「顧客」の場合、差こそあれ金融商品は自己責任という意識があり、相応のコストやリスクを取る覚悟があるものだが、知人との会話ではその程度が把握できず、こちらも慎重になった結果として有益なことは教えれないこともある。薬と思って処方したものが、使い方によっては毒になることを避けたいからだ。利己的かもしれないが、こちらの報酬は無いにもかかわらず、非難される懸念だけを抱えることにはなりたくない。とも言える。
単にケチなだけと言われてしまえばそれまでだし、それで結構なのだが、相手の考え方や経験を把握しないまま、専門分野について語ることは好ましくないと考えている。ケチと言われた方がマシ。
前置きが長くなってしまったが、要するに「今はドル円だよ」とか「日本株は●●円まで行くと思うな」という分かり易い答えを聞きたがってる相手に対しても、私は自分の考えを話さないようにしている。単なる酒の肴としての話題の一つに過ぎないと分かっていてもだ。もちろん、相手が現役投資家であったり、こちらがその経験等を知っているような間柄の場合は別。
まずは制度について説明する
金融商品は勉強すればするほど制度上の利点を利用できる。ただし、一概に「NISAはいいよ」といっても、どの商品を組み入れるかでまったく結果が異なる。まさに水物でもある。また、制度の一面(利点)だけを知っただけでは、後で「損をした」ということにもなりかねない。この「損」には、お金のほかに時間や機会なども含まれる。
確定拠出年金について質問された場合、私は日本の公的年金制度から説明することにしている。質問した側からすれば、少々まどろっこしいかもしれないが。
ちなみに、保険会社の人に聞いたところ、「顧客には公的制度では補えない点」「家族や知人(非顧客)には公的保障制度の充実度合」から説明するらしい。立場を踏まえると合理的でわかり易い。
それに倣ってというわけではないが、今回は知人に教えるつもりで 日本の公的年金制度についての説明から入りたい。
公的年金制度の仕組み
日本の年金制度は「3階建て」と言われている。
1986年4月1日以降、自営業者や無業者を含めた日本国内に住む20歳以上60歳未満の者はすべて国民年金に加入し、将来、老齢基礎年金を受給するという国民皆年金の仕組みが出来上がった。これが所謂1階部分。
そして、民間の会社員であれば厚生年金保険、公務員等であれば共済年金に加入し、将来、老齢厚生年金・退職共済年金をそれぞれ受給するというのが2階部分。この2階部分は被用者年金と言う。この1階、2階までの部分が公的年金で、下の厚労省の図のようになっている。
公的年金を補完しながら各種税制優遇措置を伴う私的年金としての国民年金基金や企業年金等が存在する。確定拠出年金もそのうちの一つ。これらが3階部分にあたり、全体で日本の年金制度は3階建てと言われている。